雛人形の意味、由来を詳しく

祝い桃の節句は、生まれたばかりの女の子の健やかな健康と幸せを祈る昔からの風習です。
赤ちゃんの初節句に用意する雛人形は、その子にとってたった一つの「お雛様」。
一生に一つ、買い換えることはありませんので、修理したりお道具などを買い替えたりしながら、
毎年お付き合いしていくものです。
ですから、ぜひ大人になってもお子様が大切にしたくなるような思いを込めて、
良いお人形を見つけてみてください。
そうして選んだお人形を、ずっと飾って楽しんでいただければ、
節句人形に携わるものとして嬉しく思います。
「雛人形について知りたいけど、いきなりお店に行くのはちょっと敷居が高い・・・」
という方のために、いくつか節句人形選びのポイントを紹介したいと思います。

   
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お雛様とお内裏様の左右のお話

お雛様とお内裏様の左右のお話

お雛様・お内裏様を左右どちらに置くかというのは、様々な考え方があります。

 

例えば、その時代の天皇さまと皇后さまの座り方に倣った並べ方です。

昔は一般的に、向かって右が高貴な方が座るという考え方をしていましたので、右がお内裏さま、左がお雛様とされていました。

ですが大正から昭和にかけて、西洋に合わせて並びが逆になりました。式典の際に向かって左に天皇さま、右に皇后さまが並ばれるようになり、雛人形の飾り方もそれに習って左にお内裏様、右にお雛様を飾ることになりました。

 

 

ここで吉貞人形では、明治以前と同じく「向かって右にお内裏様、左にお雛様」としています。

というのも、もともとの右に男、左に女という並びにはきちんと意味があって決められていたものだからです。

 

雛人形というのは、生まれたばかりの女の子の無病息災を願い守ってくれる結界としての役割を持っています。そのため、七段飾りの形ができあがるまでには、赤ちゃんを守るために中国の陰陽思想をはじめとした様々な試行錯誤がなされたと考えられます。

 

古代の中国からの陰陽思想では、世の中のあらゆる物事や宇宙の森羅万象を、対となる陰・陽の2つの要素で分類しました。

イメージを持ってもらいやすいように、下記の表をご覧ください。

陽:男、太陽、昼、光、夏、春、天、火、明、上昇、能動的

陰:女、月 、夜、陰、冬、秋、地、水、暗、下降、受動的

陰と陽というのは互いに補い合う関係を表します。どちらか一方が欠ければどちらも存在できません。

例えばこれは、生命としての男女の関係にも例えられます。古来より男性は陽、女性は陰としてのイメージが持たれてきました。そのためお内裏様は陽、お雛様は陰となります。

 

さらに古来、「君子南面す」といって、帝王は南を向いて座るものとされてきました。するとお内裏様から見て左手が東、右手が西、背後が北となります。

太陽が昇る東は陽、沈む西は陰と考えられますので、向かってお内裏様は右、お雛様は左に飾るのが自然な形となるのです。

(図も出します)

 

これらの工夫がお雛様の七段飾りに現れていますので、詳しくはこちらをご覧ください。(現代の名工ページへのリンクを貼る)

お雛様の由来

お雛様の由来

お雛様の歴史はどのように始まったのでしょうか。その答えは一つではありません。
長い時間をかけて、日本のいろいろな文化や季節の儀式などが合わさり変化しながら、
今のお雛様の慣習が作られてきました。

3月3日のひな祭りは「上巳(じょうみ)の節句」とも言われ、平安時代に始まりました。
貴族たちによって3月の最初の巳の日、つまり上巳の日に、女の子のための無病息災を祈願するお祓いがおこなわれていました。紙人形(ひとかた)や土、草、わらなどで作った人形にお供え物を添え、厄災を引き受けてくれるよう願いを込めて、川や海に流しました。この文化が次第に庶民にも浸透して、広く行われるようになったのです。農民の間では、農作物が無事育つように、人形(ひとかた)を撫でて穢れをうつし、水に流していました。
この上巳の節句は中国から伝わったもので、「桃花節(とうかのせつ)」とも言われました。ここから桃の節句とも呼ばれています。
もう一つのお雛様の由来に、「ひいな遊び」があります。紙やわらなどで作った男女の人形で、宮中の貴族の子どもたちがままごと遊びをしていたようです。平安時代に書かれていた源氏物語にも記述が出てきます。
この上巳の節句とひいな遊びが次第に合わさるようになり、今の形に近づいて行きました。

時代が進み、宮中で行われていた雛遊びは、京都から江戸へと伝わります。江戸の活気ある武家・町人文化の風俗の中で、人形作りは盛んになり雛市も開かれていました。
この江戸の豊かで比較的平和な時代に、立ち雛以外に座り雛が生まれるなど形が変化したり、色鮮やかな加工方法や技巧が考案されたりなど、お雛様の文化は職人たちの手によって華やかに変化していきました。

人形供養のお話

人形供養のお話

身代わり

お雛様は、赤ちゃんの災厄を身代わりに背負ってくれる、一人のお子様に一つの一生のお守りとして与えられるものです。
そのため、基本的にはお雛様を贈られた女の子が大人になり、結婚したあともいつまでも持ち続けていただけるものです。長く美しく飾れるように大切に保管してください。

お雛様を長い間出してあげられなかった時や、きれいにしてあげたい時などは、修理やリメイクが可能な人形店もございます。
人形供養に出される前に、もう一度飾ってみるのも良いのではないでしょうか。

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雛人形は誰が買う?

雛人形は誰が買う?

お母さんの実家から

一般的な慣習では、赤ちゃんのお母さんの実家から贈られてきました。
地域によっては父方の実家から贈ることもあります。

最近では、両家の実家が相談して折半することもあり、一概に誰が買うのが正しいとは言えません。
雛人形を買う人自体も、ご実家ではなく赤ちゃんの両親が探して購入するケースも増えてきています。
こういった慣習はそれぞれのご実家によってことなることが多いため、購入前によく相談してお打ち合わせいただくことが大切です。
お雛様を飾る一番の目的は、かわいい赤ちゃんの健やかな成長を願うことですので、柔軟な姿勢でご家族みなさんで協力して準備していただければと思います。

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雛人形のしまい方

雛人形のしまい方

長く美しい状態で楽しむためには、丁寧なしまい方が大切です。
雛人形はカビや虫食いに弱いので、湿気の多い雨の日や夜は避け、晴れた日の日中にしまいましょう。

お人形は持ち道具を外して、元の箱にもどします。

できれば手袋をしてや不敷布を使って手の脂がつかないようにします。柔らかいティッシュや筆等などでホコリを優しく払い、お顔や手を不識布などで、着物は布や紙で優しく包みます。
お人形を箱に詰め、固定するために隙間に丸めた薄紙などを軽く詰めます。

防虫剤は入れすぎると、お人形にシミや変色が起きることもあります。表示ラベルを良く見て、なるべくお人形専用の防虫剤を、一箱に1個として使いましょう。
桐やくすの木の箱などは、防虫剤の役割もするので収納におすすめです。

お人形は湿気に弱いので、箱に入れたらカビやサビが起きないよう、高い位置に収納すると良いでしょう。

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雛人形の飾る時期と祝い方

雛人形の飾る時期と祝い方

雛人形の飾り方は7段飾りや親王飾りなど、種類によって少しずつ異なります。
当店でお届けした際は、はじめに店の者が設置させていただいております。
飾る際に、箱からお人形やお道具箱を取り出す順に写真を撮っておくと、後の片付けが大変楽になります。
飾り方のパンフレットもお渡ししておりますので、そちらも参考にしていただき、もしわからない場合はお気軽にお問い合わせください。

飾る時期

立春(2月4日頃)を目安に、最低一週間以上前と考えていただければよいかと思います。
それよりも前に飾ればお雛様を鑑賞して楽しむ期間も長くなりますので、「この日に絶対に飾らなくてはいけない」と難しく考えなくて良いと思います。
雛祭りが済みましたら天気が数日続いた後(陰干しをして)に早めに片付けてください。
雛人形を飾る場所は、日当たりの良いところやお人形に直接温風があたる場所は、変色や変形等の原因となりますので避けましょう。

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祝い方

神様と人間の仲介物となるお雛様は、赤ちゃんの分身として赤ちゃんの代わりとなって厄災をひきうけてくれるための贖物(あがもの)や撫物(なでもの)のような役割と考えます。

誕生した赤ちゃんに思いの深い人たちが集まって、悪いことがないようにと願い食事会をする。
これがおひな祭りです。

おまつりの日(3月3日)の晩お風呂から出た後にでも身代わりに設えたお雛様を触らせて一年分の厄災をお人形に封じ込めてしまってくださいとお願いしてからおしまいになるようにしたらおまつりの意味が分かりやすくなるかと思います。

雛人形の選び方のポイント

雛人形の選び方のポイント

住宅事情と大きさ

お雛様を探される際に多くの方が意識されるのが「飾るスペース」と「収納」です。
スペースを優先してお雛様を選ばれてしまうというのはすこし寂しいものですが、今はアパートやマンション暮らしの方が増えましたので、段飾りから平飾りへと、お雛様の飾り方も変化してきました。

はじめは雛人形や道具を全てそろえられなくても、少しずつ増やしていくこともできますので、ぜひ暮らしの中で楽しく大切に飾れるお雛様を選んでください。

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主なお雛様の種類

・七段飾り

七段のひな壇の上に、雛人形を15人乗せる飾り方です。一番正統派といわれるものでお人形の種類・並べ方から小物・道具まで、一つ一つに赤ちゃんを守るための意味がこめられています。

・三段飾り

七段飾りよりもコンパクトな飾り方です。1段目に親王(殿と姫)、2段目には三人官女、そして3段目にお道具が並ぶことが多いです。2段目に五人囃子を並べるものや、2段飾り、5段飾りもあります。

・親王飾り

親王の2人と桜橘の花木、お道具などを飾る並べ方です。人形の大きさは様々です。

・収納飾り

最近生まれた飾り方で、お人形を飾る土台がそのまま収納用の箱になっています。お人形は親王のみのものから三人官女も入れたものまであります。お人形も一緒に収納するように作られているため、お人形の着物の裾が短くなっていることや小ぶりなものが多いのが特徴です。

お雛様のお顔

女の子のお人形ですので、お雛様のお顔も気にいるものをぜひ選んでみてください。

選び方は人それぞれです。その子の顔に似ているものであったり、こういう女性に育って欲しいという願いを込めたものであったり。飾る時に選んだ由来を、大きくなったお子さんと飾りながら語ってあげられると良いですね。

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衣裳

お雛様が着ている色鮮やかな着物は、平安時代の宮廷衣装です。

これは現在の雛人形の原型になった「古今雛」といわれる、江戸時代に流行した雛人形から来ているとされます。

お雛様は「裳唐衣(もからぎぬ)」(十二単の一番上に着るもののことです)、お内裏様は「束帯(そくたい)」という正装をしています。より本物の衣装に近い作りのものほど、手間と工夫がかかっています。

着物の布地は実際の着物と同じく高級なものが使われます。その時々の流行やお雛様のお顔立ちに合わせて、多種多様な着物がお雛様のお顔立ちに合わせて作られてきました。さながらファッションショーのようなお雛様の衣装の華やかさは、女の子のお祝いならではと言えます。

素材とつくり

一般的に雛人形は職人さんが一つ一つ作っているものと、

アルバイトやパートさん達による量産体制で作っているものとが広まっています。

前者と後者とでは、作りの丁寧さや造形の細かさ、使用する素材の部分に差が出てきます。

このような時間のかけ方と使用する素材で、お雛様の値段は変わると言えます。

当店の雛人形は、人と同じように見えにくい部分もお人形の体として丁寧に作り、できるだけ土に戻る素材を目指して製作しています*。

胴体は日本人の主食稲藁を、また手や足は練り物や木製品を標準として使用しています。

生地は一般品より多く使用して、ゆったりした形を意識して製作しています。

赤ちゃんのかわいらしい手で撫でてもらうお人形ですから、できるだけ柔らかな仕上がりを求め製作しております。

素材は、帯や、竜村、正絹、人形用の織物と様々な素材の品物を作っております。

*店頭での取り扱い商品の中には例外もございます

ホームページやカタログの写真では判りにくいかもしれませんが、店頭などでお雛様の作りが分かるポイントをいくつかご紹介します。

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襟や袖の部分

お雛様の手元の、着物の袖が重なる部分を見てください。袖を美しく見せるための処理は、職人さんによって様々な作りや布の使い方があります。丁寧なものは、外から内側の着物への色の淡い移り変わりが繊細で、袖の折れ曲がる部分も、より優雅に映えるように工夫が施されています。

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裾の部分

お雛様の着物の後ろの裾部分は、長くゆったりと広がっていましたが、飾る場所がコンパクトになるにつれて、短く切ってしまっているものもあります。

美しい色柄の布の重なる優雅さは、お雛様の見どころの一つですので、できれば本来の長さのものの方をおすすめします。

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手足

手の仕草は、お人形の雰囲気や意味を表現してくれますので、繊細なものほど指の一本一本の動きから作られています。お雛様以外の三人官女や五人囃子など動きのある人形の手を見てみてみると、その表現力の違いが分かりやすいです。

お雛様の足はお人形を裏返してみないと見えませんが、プラスチックの足があるだけのものや、ちゃんと足袋を履いているものがあります。足袋を履いているから良い、というようなことは一概には言えませんが、裏側や腕の下のなどは、職人さんのこだわりが見えて面白い部分のひとつです。