お雛様・お内裏様を左右どちらに置くかというのは、様々な考え方があります。
例えば、その時代の天皇さまと皇后さまの座り方に倣った並べ方です。
昔は一般的に、向かって右が高貴な方が座るという考え方をしていましたので、右がお内裏さま、左がお雛様とされていました。
ですが大正から昭和にかけて、西洋に合わせて並びが逆になりました。式典の際に向かって左に天皇さま、右に皇后さまが並ばれるようになり、雛人形の飾り方もそれに習って左にお内裏様、右にお雛様を飾ることになりました。
ここで吉貞人形では、明治以前と同じく「向かって右にお内裏様、左にお雛様」としています。
というのも、もともとの右に男、左に女という並びにはきちんと意味があって決められていたものだからです。
雛人形というのは、生まれたばかりの女の子の無病息災を願い守ってくれる結界としての役割を持っています。そのため、七段飾りの形ができあがるまでには、赤ちゃんを守るために中国の陰陽思想をはじめとした様々な試行錯誤がなされたと考えられます。
古代の中国からの陰陽思想では、世の中のあらゆる物事や宇宙の森羅万象を、対となる陰・陽の2つの要素で分類しました。
イメージを持ってもらいやすいように、下記の表をご覧ください。
陽:男、太陽、昼、光、夏、春、天、火、明、上昇、能動的
陰:女、月 、夜、陰、冬、秋、地、水、暗、下降、受動的
陰と陽というのは互いに補い合う関係を表します。どちらか一方が欠ければどちらも存在できません。
例えばこれは、生命としての男女の関係にも例えられます。古来より男性は陽、女性は陰としてのイメージが持たれてきました。そのためお内裏様は陽、お雛様は陰となります。
さらに古来、「君子南面す」といって、帝王は南を向いて座るものとされてきました。するとお内裏様から見て左手が東、右手が西、背後が北となります。
太陽が昇る東は陽、沈む西は陰と考えられますので、向かってお内裏様は右、お雛様は左に飾るのが自然な形となるのです。
(図も出します)
これらの工夫がお雛様の七段飾りに現れていますので、詳しくはこちらをご覧ください。(現代の名工ページへのリンクを貼る)