陰陽で見る方位と男女の左右 -七段飾りを読み解く3-

陰陽で見る方位と男女の左右 -七段飾りを読み解く3-

さて、人の世のさまざまな事柄が写し出されていると考えられる、雛の世界。その人形と道具の位置も、陰陽にそって考え抜かれています。

ひな壇の後ろを、北半球で動くことのない北極星が位置する場所、つまり北とすると、向かって右の陽が昇る東が陽、左の沈む西が陰と考えられます。こうして、ひな壇の向かって右が陽、左が陰という流れが見えてきます。

自然界の摂理に考えると、男は陽、女は陰という見方ができます。男雛は向かって右、女雛は向かって左に座るという、自然な位置が解ります。

 

陰陽

 

因みに、何人も絶対に曲げることを赦さない仏像の儀軌によると、その左手は慈念手、右手は悲念手とも呼ばれ、仏教の原点の慈悲の心を意味します。

左手(向かって右側)の慈は、如来の心の父親の愛であり、右手(向かって左側)の悲は普く包む観音菩薩の心であり、母の愛を表すとされます。

 

対雛の男女の位置について、右か左かどちらが本当なのか問答は多いですが、数年来私はその答えを迷わないことに決めています。

原点にある陰陽思想 -七段飾りを読み解く2-

原点にある陰陽思想 -七段飾りを読み解く2-

江戸時代、時も方角も、人々は十二支を当てて考えていました。十二支によるものの考え方は、陰陽思想からきています。

古代の中国哲学の原理である陰陽思想は、どこかかび臭く古い考えと思われるかもしれません。ですが、実は天文観察から生まれたもので、意外に科学的で奥深く究められたものです。

自然界の摂理を文字に置き換えているため、現代の私たちが学んでも新鮮に感じるものが多いことに驚きます。

 

陰陽方位

 

色々な自然界の摂理をとらえる陰陽思想では、東西南北の方角方位のこともよく考えています。

方位は十二支で表され、子の北に始まり、丑寅が北東、卯が東、辰巳が南東、南が午、南西が未申、西が酉、北西は戌亥となります。

方位と時刻月次が重なる丑寅は、鬼門としてよく耳にすると思いますが、これについては別の機会にお話ししたいと思います。

男雛と女雛の右左 -七段飾りを読み解く1-

男雛と女雛の右左 -七段飾りを読み解く1-

「おひな様とおだいり様はどちらが左か右か」というのは、様々に説があります。

 

現代では、おだいり様を明治の改暦以前に従って向かって右にする場合と、西洋の王室の並び方に従って左にする場合とに分かれています。

 

お雛様お内裏様の左右

 

私は原点に立ち返って左右を決めることにしています。いつの時代に合わせるかではなく、どうして江戸時代より昔は左におだいり様を並べていたのか?という理由を考えたのです。

 

ここで大切にしたいのは、明治の改暦で太陽暦が入ってくる以前、それまでの1000年以上の時間、祖先たちの毎日には、暦はもちろんあらゆる面で、十二支の支配を受けた生活がありました。雛の文化はこの1000年の歴史の中で育ってきました。