さて、人の世のさまざまな事柄が写し出されていると考えられる、雛の世界。その人形と道具の位置も、陰陽にそって考え抜かれています。
ひな壇の後ろを、北半球で動くことのない北極星が位置する場所、つまり北とすると、向かって右の陽が昇る東が陽、左の沈む西が陰と考えられます。こうして、ひな壇の向かって右が陽、左が陰という流れが見えてきます。
自然界の摂理に考えると、男は陽、女は陰という見方ができます。男雛は向かって右、女雛は向かって左に座るという、自然な位置が解ります。
因みに、何人も絶対に曲げることを赦さない仏像の儀軌によると、その左手は慈念手、右手は悲念手とも呼ばれ、仏教の原点の慈悲の心を意味します。
左手(向かって右側)の慈は、如来の心の父親の愛であり、右手(向かって左側)の悲は普く包む観音菩薩の心であり、母の愛を表すとされます。
対雛の男女の位置について、右か左かどちらが本当なのか問答は多いですが、数年来私はその答えを迷わないことに決めています。