結婚式というのは、たんに男女が結ばれるだけのお祝いではなく、次の世代の誕生を祈り、促すための意味もこめられています。
その昔、日本での原始信仰では、人は誕生する時、肉体と共に霊魂を具えてくると考えました。人は肉体だけでは生きられず、活動するには魂が不可欠とされていたのです。
婚礼の儀によって男女の霊魂が結ばれると次の生命が生まれ、死によって魂が肉体から抜け出すと信じられていました。
そうすると、ひな壇の結婚式というのは良縁の願いに加え、「次の世代に恵まれますように」という祈りも込められていると言えます。
ひな壇の中には、日本創生神話にある伊邪那岐(いざなぎ)・伊邪那美命(いざなみのみこと)の男女の神にまつわる品々や儀式がこめられています。
例えば三人官女は、婚礼の儀の進行役です。左右の女性は巫女姿で神酒を注ぎ、中央の女性は婚礼の儀の司会進行を務め、祝詞の口上を述べます。
現代の結婚式は「男女の愛を誓う」という形が多いようですが、もともと神社で行われている婚礼の儀の様式は、生命(子ども)の誕生にまつわる神様に祈るものなのです。
結婚式の形をとっている初節句には、すでに次の次の世代の誕生をも願う心がこめられているのです。