陰陽については前の記事でも少しお話ししましたが、これは世の中のあらゆる物や事象をプラスとマイナスに分けて考えるというのものでした。
江戸時代は陰陽の考えが深く根付いていたため、雛人形の形に関しても知識人たちが試行錯誤して、陰陽の恩恵にあずかるよう多くの工夫を凝らしました。
そこで、どの顔をどの人形にさすべきかの答えは、この陰陽にあるのではないかと考えました。
まず注目したのは陰陽の桜橘の並びです。
ひな壇では向かって右に桜、左に橘を並べます。桜は春、橘はみかんで秋を意味します。ひな壇に春秋があるということは、季節の陰陽がこのひな壇には込められていると言えます。
ということは、お人形の顔の並びも陰陽に従ってさせば、自然とあるべき形が見えてきます。
そこで決めたのが口開きと口結びです。口を開くのは陽、口を結ぶのは陰というのは自然とイメージできると思います。
桜がある右側のお人形には口開きの顔をさし、橘がある左側には口結びの顔をさすと決めました。
もともとはお内裏様の顔も口が開いていて、お雛様が口を結んでいたのではないかと思っています。
意味を知れば雛づくりのあるべき姿がわかってくる
今お話ししたことが正しいのか間違っているのかは、はっきりした文献が残っていないためわかりません。
ですが、陰陽思想のように昔の考え方を紐解いていくと、お雛様の自然の流れに従った姿が見えてくるんじゃないかと思います。
はっきりとした決まりが文献で残っていない業界だからこそ、本質に立ち返って雛人形に向き合っていきたいものです。