組雛ごとに売られる方法は形を変え、やがて店頭では十五人揃の雛段飾りと、飾り段用九品の雛具でセット販売される規格が広がり、雛人形の業界は隆盛期を迎えました。
しかし、売れすぎると今度は従来の生産では間に合わなくなったのです。他聞にもれず、五人囃子の雛頭はみんな、大鼓の型が使われるようになりました。つまり、五人一律の簡略形がとられるようになったのです。
十五人それぞれの頭を用いた本来の伝統は、少し消え失せるかのような流れで現在に至っています。
私どもの作る雛人形は、今も五人囃子の顔は一つずつ変えています。なぜなら、五人の髪型には子供の成長への願いが込められているからです。
五人囃子がどうして童子の姿をしているのかについては、また別の回でお話ししたいと思います。